トピック: 1-5 壁のない家
トモコさん、ああナンシーの、とはちがう
グレーのスチール製のエンジェルの、
天国へつづく階段ような澄んだ音が海から吹く風に舞った。
ガレージから奥の玄関へと、
スティーヴンが、ロランが、そしてあたし、
JJがその後に続いた。
どうってこともない玄関を開けると、
わあ、すてき!
誰にも知られないように、
少女のあたしがダンスした。
その後ろで、ヒューッ、
ロランが口笛を吹いて「いいねえ」
「Well Done, JJ! よく探したな」
吉田山を出てから初めての、
スティーヴンの笑顔だった。
だけど、
その時、
本当にみんなうれしかったのか、
それともとても悲しかったのか、
わからなかった。
だけど、ここがあたしたちにはぴったりだ、ってこと、
それだけはみんなわかってた。
あたしたちが一目惚れしたこの家は、
一本のヤシの木の庭を挟んでコの字型の、
そう、ちょっと平安時代の寝殿造りみたいな、
でもぜんぜんちがうんだけど、
とにかくそんな空気の家だった。
そして間取りはこんなだった。
リビングに続くキッチン、
一階にベッドルームふたつ、
二階にベッドルームひとつ、
それぞれにバスルームがついていた。
そして二階へ上がる階段の手前のポーチ。
二階には壁があったけど、
それ以外の部屋はどれも庭に面した壁がなかったし、
島の黒い溶岩がモチーフの床は、
落ち着いていてとても心地よかった。
そんな家の住人となったのはあたしたち、
友だち4人組。
あたしだけ、おんな。
あとは、おとこ。
だけど部屋分けはとても簡単だった。
スティーヴンがあたしの上、
壁のある部屋を彼の城にすると、
自動的にJJとロランは庭を挟んであたしの向かいの
庭と室内を仕切る壁のない、
まるで新婚さんのダブルベッドの部屋を使うことになった。
おかげであたしたちが1ヶ月後にこの家を去るまで、
大きなマホガニーのベッドの上に並んで横になるふたりを、
Honey & Darling、
ゲイの新婚さんカップルとからかって遊んだ。
だって、
そんなちょっとした冗談があたしたちには
もうどうしようもないほど必要だったから。
キッチンのあたし、
タオル一枚でシャワーから出て来たロラン、
ベッドの上でラップトップを広げているJJ、
寝室に戻るあたし、
着替えをすませたロラン、
壁のないこの家ではいつ誰がなにをしているか、
すべてが視界のなか。
だけどあたしたち3人の誰もがそれを気にしなかった。
むしろ寂しがりやのあたしは、
このちょっと奇妙なスタイルが妙に気に入ってしまった。
あたしの部屋からキッチン、そしてリビングへ向かう左手には、
二段下がったシャワールームがあった。
床はThe Big Islandらしい黒い石、
見あげれば玄関横のバナナの木の葉、
そのバナナは朝食のテーブルであたしたちをよろこばせた、
青く晴れた空、海風に流れる星の夜空が見えた。
なぜって、そこには屋根がなかったからね。


キーン、
シャーン、
シャラーン、
シャラララ、