トピック: 3-1 パーフェクト キッチン

毎朝あたしは誰よりも早く起き出して、
5時半にはね、
ほんのりと明かるくなりはじめたキッチンへと向かう。

なんといってもこの家のキッチンは、すばらしかった。
だって、光りを遮る壁がないんだから。
夢のような、自然にいるような、でもちゃんと屋根の下。
鳥の歌声と波音のBGM、
あたしのパーフェクト・キッチン。

4つのコンロの燃える火で、エナジーを注ごう。
包丁だってまな板だって鍋だって、
カンカン、シャキシャキ、ドキドキ、
みんなクルクル踊り出す。
玄米を炊く圧力釜のスチーム音の隣りで、
根野菜、昆布、煮干し、干し椎茸をゆっくり煮出し、
その日の料理のベース、スープストックを取る。
調理の水はぜんぶ島のミネラルウォーターを使ったよ。
トントントン、
向こうが透けるほど、
これ以上はできないってくらい薄くスライスしたたまねぎの、
涙がふんわり甘く包まれてうっとりしはじめるほど
ゆっくりゆっくり、飴色になるまで炒める。
にんじんを加えてジャッ、ジャッ、
切ないほどの甘い匂いがキッチンから海風に舞って、
もう家中がすてきに溶けたにんじん色のお砂糖菓子みたい。
島の、暖かい風、澄んだ水と肥えた土、輝く太陽、
優しい地球たっぷりのオーガニックにホールフーズ、
まるごと食べよう、
You are what you eat!
からだとこころ、
口にするもの、自分そのもの。

明け方の黒い岩でのヨガを終えて、
ほんとうはこの甘いロマンチックな匂いに誘われて、
キッチンに現れたスティーヴンとみんなの朝食がはじまる。
だけど、もうどこかでひと泳ぎして来たロランとJJは、
朝食だけは好きにした。
バターが溶け出すカリカリトーストにイェローチーズをスライスして、
Soy Milkをかけたシリアルも、
そして何よりもスティーヴンを羨ましがらせたのは、
この島の原産、コナの農場のコーヒーの放つ香ばしさだった。

あたしの育った島の人はそんなこと、
飲めない人の前で飲むなんて無神経だっ!て言うにちがいない。
たんぽぽの代用珈琲にうんざりしているスティーヴンに、
あたしはちょっとかわいそうな気がしたのに、
JJとロランはそれほどそんなこと、気にかけてる様子もなかった。
だからやっぱりあたしだけはって、
決してコナのコーヒーを飲んじゃいけないって、
The Big Islandにいる間、
バカみたいだけどあたしはそれを一度も楽しまなかった。

この島でのあたしたちの毎日の献立はこんな感じ。

「朝だからしっかり食べようBreakfast!」
 ・完熟メロン(起きてから最初に食べること)、それか島で穫れたパパイヤ!
 ・圧力鍋で炊いたもちもち玄米(時には日本から持って来た小豆を混ぜて)またはキヌア
 ・じっくり炒めたたまねぎ、にんじんとアラメの甘く炊いたん(ジンジャーを入れて味を引き締めて)
 ・Tofuとひじきのあっさりハンバーグ
 ・Soy Sauceとタヒニのソースがけ
 ・天日干しの梅干し(これも日本から持って来た)
 ・濃いオレンジ色の甘いキャロットとわかめのお味噌汁
 ・無農薬のお番茶(これもこれも日本から持って来た)

 ときどきのWestern StyleなBreakfastは
 ・Whole Grainのしっかりパン、または焼きたてのフカッチャ
 (E.V.O.O(エクストラ・ヴァージン・オリーブオイル)とローズマリー乗せ)
 ・砂糖抜きでもとっても甘い手作りジャム
 ・タヒニと蜂蜜のピーナッツバターみたいな栄養たっぷりスプレッド
 ・スクワッシュとキャロットのとろとろ甘いスープ
 ・干しクランベリーとマンゴ、たまねぎのしゃっきりグリーンサラダ(レモン、E.V.O.O、塩でサッと和えて)
 

「これも大切、2時のLunch!」 
 ・炊きたて玄米、ときには炊き込みごはん
 ・スチームしたキャロット、ブロッコリー、スクワッシュ、ビーツ、蒸した島のタロイモに砕いたナッツ類のインドネシア風満腹サラダ(タヒニとTofu、Misoのクリーミーなドレッシングがけ)
 ・テンペ、カリフラワー、セイタンの揚げ物
 ・朝のアラメの炊いたんをピリ辛ごま油炒めに
 ・ときどきお魚一品(だけど島ではあまり食べたい魚がなかった)
 ・朝のお味噌汁、またはコトコト丸ごと根野菜と昆布のほっこりスープ
 ・お番茶またはジンジャーティー


「ときどきのお・や・つ・」
 ・Soy MilkとWhole Grainのバナナパンケーキ(オーガニックのレーズンも入れてもおいしい)のアップルソースがけ
 ・100%ナチュラルジュース(Apple、Cranberry、Grape)


「ちょっとだけは食べておこうか?Dinner」
 ・その日の残りもので軽く(エナジーが抜けるから、その日作ったものは次の日まで持ち越さないこと!)
 ・フルーツ
 ・お番茶


こんな一日の献立すべてを、そう、毎日ね、
食後のリビングで書き留めることにした。
それが後でなにかの役に立つとはその時は考えもしなかったけど。
そして一日を終えて、
みんなの部屋の灯りが消えた頃、
明日の下準備を済ますとパチン、
お休み。
今日もどうもありがとう。
see you in the morning, また明日。
キッチンの灯りを消す。
雨音みたいな打ち寄せる波のBGMでベッドに崩れ落ちる。

こんなのが、島のキッチンでのあたしの毎日だった。