トピック: 6-2 虹
ホノルルの空港では
島のまばゆい太陽に満たされた人たちが
幸せそうな笑顔で帰りの飛行機を待っていた。
カラフルなプラスチックの椅子に、
電車ごっこみたいにあたしたち5人、一列に座った。
なんでもない旅の仲間みたいに冗談を言いあったり、
ゴソゴソかばんを開けてみたり、
おちゃらけた写真を撮ったり、
だけどほんとうのあたしは
咽の奥でしょっぱいものを飲み込みながら、
こんなのヤダって、
本当にもう叫び出したかった。
シカゴ行きの搭乗を促すアナウンスがフロアに流れて、
あたしたちのまわりの空気が一瞬、
割れかけた氷のように、強ばった。
JJが立ち上がって、そしてロランが、
スティーヴンと固く抱き合った。
スティーヴンはあたしを見た。
あたしもスティーヴンを、
そしてそのちょっと寂しそうな口元を記憶に留めたかった。
JJもロランもシンディーも、
静かに少しうつむいて、
あたしたちのまわりは
時間が停まった。
再びフロアに響くアナウンスに、
細い彼の体温があたしから離れる。
そしてあたしの手を強く握り返したスティーヴンの背中を、
あたしは、押した。
これが、最後、かも、しれない。
See you...., soon enough.
yeah...see you soon...
シンディーと搭乗口に消えてゆく
スティーヴンがもう一度、
あたしたちを振り返る。
声にならない、Good Bye。
JJとロランと、
駆け出したいあたし。
のどに絡まった、言葉たち。
がらんと人気のなくなったゲート前。
シカゴへと飛行機は滑走路を滑りはじめる。
機体が斜めに浮いて、青い空へと登ってゆく。
JJとロランとあたし、
ガラス越しに空を見つめながら誰ともなく互いの手を握りしめ、
少しだけ、
それから静かに、
静かに、
3人でそっと泣いた。
JJは眼鏡を拭き、ロランは唇を噛む。
頬を伝う温かい感触。
ずっと誰もなにも言わなかった。
あ、
虹。
あたしたちのサヨナラのための、
スティーヴンの望む死のために、やって来たこの島。
それは今、一つの願いに変わった。
またスティーヴンに会えること、
生きている彼、に。
飛行機の飛び去った空に、
消えそうな、消えない光。
その天と地を結ぶ七色の橋。
望みはいつだってある。
例えそれが叶わなかったとしても。