トピック: 6-3 ビッグウェイヴ
この海岸の住人たちは一日の終わりと始まりに、
みんなで砂浜に集まってはのんびりと
笑ったり食べたり飲んだり、
とても楽しそうな毎日を過ごしているようだった。
スティーヴンとシンディーがシカゴで落ち着くまで、
あたしたち3人、JJとロランとあたし、がシアトルに行く前に、
このオアフ島のいちばん北の海岸、
ノース・ショアのゲストハウスで次の章への短い充電をすることにした。
二日目の夕方、
仲間たちとビーチに座って笑っていた家主が
向こうから歩いて来るあたしたちを見て言った。
「あーら、あなたたち、こっちにいらっしゃいよ!」
「ありがとう、でももうすこしあっちのほうまで散歩に行こうと思って」
JJが丁寧に断って、にっこり、
あたしとロランは少しうつむき加減に通り過ぎた。
「あら、そう、」
だけど家主も彼女の仲間たちも、
風変わりなこの3人を気に留める様子もなく、
またすぐに愉快な笑い声が背後から聞こえて、
あたしたちは、ほっとした。
初めて見るノース・ショアの波は、
なにもかもを破壊してしまいそうな
これまでに見たことがない、
高くパワフルな荒々しい波だった。
ここで世界的なサーフィン大会が行われるのも、
波に砕かれて亡くなる人がいるんだよって、
着いた日の夜おじいさんの木が言ったのも
簡単に納得できた。
この町に来てから毎日、
あたしたちはビーチに散歩に出かけた。
時には東へ、時には西へ。
30分ほども裸足で歩くと、
どこのビーチにもビーチドッグがいるって気がついた。
彼らはじっと自分たちのテリトリーへの侵入者(人間)を観察をし、
侵入者がテリトリーから出て行くのを見ている。
そして彼らはとってもお利口で、
決してお互いのテリトリーには侵入しない。
それが彼らのルールらしい。
その次の日の朝、
木の家のすぐそばの、
あの轟々と恐ろしいほどの波音をたてる
海で泳ごうってことになった。
ロランとJJがヒャホー!
奇声を上げて海へと向かう。
波打ち際でもうすでに右へ左へとゴロンゴロン、
まるで洗濯機の中みたいに
ビッグウェイヴに揉まれる2人を見て、
あたしはすっかり怯えて
とてもその荒れ狂ったノース・ショアの波の中へは入って行けなかった。
入ったらきっと二度と岸へは戻れないか、
戻ったとしても二度と海を好きにならなかっただろう。
しばらくして、
濡れ犬みたいに頭をパタパタ振りながら、
すっかりヨロヨロになったふたりが戻って来た。
「ねえ、ところでね」
砂浜に敷いたタオルの上に座ると、
JJは丸い眼鏡をかけながら言った。
「スティーヴンのことだけど、あいつだって、
ああするしかなかったんだよ」
なんのことかあたしはよくわからなかった。
わからない振りをした。
「だから、シカゴ行きのこと。シカゴのあいつの兄夫婦アパートは狭いからね」
「ふーん・・・(So What?だけどね)」
「で、この前の休みに三人で一緒にタイへ行っただろう?」
「うん(楽しかったよね)」
「あの時だって、あいつ、ずっと君のこと、気になってたんだよ。
でもどこか捻くれてるからな、素直になれないんだ」
「ヘンナノ・・・(男って!)」
「ま、そういうことだからさ、ゆるしてあげなよ。
確かにあいつ、いつもよりましてわがままではあるけどね」
JJは彼にしては珍しくウィンクした。
ロランは目の前で弾けた白い大きな花のような、
波を見つめている。
あたしは、
思いきってシルクみたいな砂の上を
大きく巻く波に向かって走り出した。
バーン!
波にぶつかって、
足が真っ逆さまになって、右も左もわからなくって、
あたしは洗濯機で息もできずに回転する魚。
庭のヤシの木の歌う声。
遠くからエンジェルの音。
お地蔵様が笑ってる。
ビッグウェイヴだって、平気。