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PASCALSの音楽がどんなものなのか、言葉で説明するのはとてもむずかしい。なぜならパスカルズの音楽はまずジャンルを言うことができないし、他の似ている音楽とならべてあんな感じと人に伝えることも不可能だから。白い画用紙を前にして、考え考えクレヨンでたどたどしくイメージを形にするようにしか、説明のしようのない音楽なのです。
パスカルズのライブに行ったのは今回で2回目。2、3年前に吉祥寺のStar Pine's Cafeでのライブにさそわれて行ったのが最初だった。たのしくて、あたたかさにあふれる、とても印象的なライブだったことはよく覚えているのだけれど、以来聴いていなかったので、音楽の印象はだいぶ薄れていた。それがひょんなことで新しいCD「パスカルズが行く」を先月聴いて、2曲聴いたところでノックダウン、とりこになった。これはもうぜひともライブに行かなくてはと思っていたところでの、ライブ行きでした。
パスカルズの音楽を紹介するのに、まずは楽器編成あたりからいきましょうか。アコーディオン(2)、トイピアノ(1)、ギター(1)、ウクレレ(1)、バンジョー(1)、バイオリン(4)、チェロ(2)、トランペット(1)、パーカッション(1)、ドラム(1) - - 総勢15名にもおよぶ大アンサンブルなのだ。これにそれぞれの人が脇にかくしもち(?!)、必要に応じてあるいは即興的に合いの手をいれる様々な楽器類(ピアニカ、リコーダー、おもちゃ的な笛や打楽器、鈴つきサンダル、口琴などなど)、それとヴォーカルとコーラス、あと即興的に発せられる声のパフォーマンス(というより喜びの奇声とか口遊び、かな)や音のないリズム運動(手をゆらゆらさせたり身体をゆする即興的な踊り。これはパーカッショニスト石川浩司さん/たま/の独壇場)。そして曲はバンマスのロケット・マツさんやメンバーの手によるものを中心に、ブライアン・イーノ(Taking Tiger Mountain)やパスカル・コムラード*のカバー曲、友部正人が作詞で参加しているもの、トラディショナルの曲などがある。
パスカルズの音楽を聴いていて思うのは、まずこんな音楽どこでも聞いたことないな、ということと、こんな素晴らしいものが、ふつうの人がふつうにしていたらなかなか出会えないのはどうしてなんだろう残念だな、ということ。パスカルズのライブから帰ってイラク関係のニュースを見ようとテレビをつけたら、カウントダウンTV(TBS/0:55A.M. 〜)をやっていて、流れてくるヒットミュージックの数々を聞いていたら、その「型通りさ」にしばしあらためて衝撃をうけてしまった。一つ一つ違うようでいて、映像抜きで聴いたらどれも同じにみえてしまいそうな音楽。何重もの包装紙にくるまれていて歌い手の核の部分にはふれることのできない音楽。自己模倣をくり返す音楽。ありきたりの言葉でいえば、大量生産と消費のための音楽。だけれどもなぜか多くの人は、とても従順にこの圧政(?!)に身も心もあずけているように見える・・・いったい何がいけないのだろう。そしてこんな音楽ばかり聞いて育つこどもたち、いったいどんな感性とともにこれからの人生を生きていくことになるんだろう。
パスカルズの音楽は、こういう音楽のありかたから一番遠いところにあるようにわたしには見えた。横浜でのライブを聴きながら感じていたのは、こんなにたのしい音楽、こんなにじゆうな音楽、こんなにふしぎな音楽、そしてほんとうの意味でぜんえいな音楽が、つよく人の胸を打っているんだ、つよく人の心をゆさぶってじっとしていられない気持ちにさせているんだ、ということ。そして最高にたのしい音楽は人を泣かせることもあるんだという発見。もしかしたら、この感情は、いまこの世界が(ここに住むすべての人々が)イラクでの戦争によってひどく傷つけられていることと、少し関係があるのかもしれない。ライブのときにMCのマツさんはひとこともそんなことにふれなかったけれど、わたしはパスカルズの音楽のなりたちの基本のところに、こうではない世界を夢見る姿勢がきっとあると思った。人間がもともと持っている自由さに気づいたり、自分の中の奔放さを肯定されたり、世界の不思議さとひとつひとつ向きあっていこうという気持ちになれる、そういう音楽だから。戦争に反対することと同じように世の中をよい方に変えていく力となるものなんだ、これは。
パスカルズの音楽はココではないどこか、世界の外れ、あるいは世界のへりの小宇宙から発せられているみだいだ。本気のような遊びのような即興性とアンサンブルの生真面目さが仲良くとなりあっている。マツさんいわく、<ぼくらは普段メンバーが集れる機会が少ない、会うならいっそライブかレコーディングをしてしまう、練習している時間がもったいないから。だからライブでは非常にラフな形で新曲を披露して、半年くらいして完成版になるなんてこともあるんです>。そうか、なるほど。まるで新曲が生まれる現場に立ち会っているような演奏だなぁと思って聴いていたけれど、じっさいライブでの楽曲や演奏は進化の途上で、まだ最終形にいたっていないこともあるのだ。考えてみれば、音楽って、ほんとうはそういうものでしたね。CDのようにパッケージ化するのも、音楽をモノ化して扱いやすくするための方法論であって、音楽そのものとはあんまり関係のないことなのだから。そしてパスカルズにおいては一度最終形となった曲も、年月がたってまた演奏されるときには、新しい音楽としてきっと違った風に演奏されるのだろう。
ところでパスカルズのレパートリーには、歌のない曲が多い。不思議なことに、わたしは人に言われるまでそのことに気づかなかった。歌のない曲にも、演奏者たちのたくさんの様々な<声>があふれているからだろうか。だからアンサンブルに固まり感がない。それはとてもかっこいいことだ。
パスカルズは2001年2月にヨーロッパ、アメリカ、アジアでCDを発売し、秋にはフランスツアーをやって各地で好評を得ている。今年も新作CDの発売と秋にはフランスツアーがひかえているそう。CDのノートの中で、前回のツアーについてマツさんは、「知らない国の知らない景色のなかで、いつもあんまり見たことのない顔つきの人たちの前で、演奏するのは本当に面白かった。いま思うと夢みたいだ」と書いている。パスカルズがどんな風に音楽と向きあい、どんな気持ちでライブのステージに立っているのか、よく伝わってくる言葉だと思う。
パスカルズに興味を持った方に、少し情報を。「パスカルズが行く」のCDは、タワーレコードなどで購入できるそうです。詳しくはパスカルズのホームページでご覧ください。またコンビニのミニストップ店内で、3月4月の間、CDの中から「きんとんうん」という曲が流れるそうです。浜崎あゆみなどに混ざって一日何回かかかるそうですが、かなり変わったサウンド、歌声なので、耳にした人はすぐに気づかれると思います。「きみはいつもぼくが誰だか/ぼくが誰だか教えてくれる/空をつかむ木々の枝々/みあげてるきみの目がきれい」(「きんとんうん」より)。トイピアノのあかねさんとウクレレの知久寿焼さん/「たま」ヴォーカル/によるふしぎな歌声が聴ける曲です。
2003年3月24日午後7時30分
大黒和恵・editor@happano.org
* パスカル・コムラード=パスカルズのグループ名の元となるフランスの音楽家。現代のサティと呼ばれ、フランスの若者たちにカリスマ的人気をもつアーティスト。
●首都圏にお住いの方は、パスカルズが参加するライブが4月5日(土)藤沢の時宗総本山遊行寺でお聴きになれます。
○「どんとこい〜春の遊行寺音祭り」
4月5日(土)12:00〜日没まで(パスカルズは4時すぎから30分程の予定)
入場:1000円
ライブとフリーマーケット盛り沢山の春のお祭りです。
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