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ビジュアル書がならぶ縦長の店内、そのいちばん奥の正面に、毛(もう)さんのド派手なポスターがドーン、ドーン、ドーン。その手前にはTシャツやら雑貨やらポストカードやら本やらがあっちに吊りさがりこっちに積まれ、となにやらキッチュで異様なムード。(毛さんというのは、今の中国では批判の対象であったりもするのだから、このポスターは観光客向けのおみやげ品なのでしょうか?そうだとすると、それはそれですごいな!、中国)
おとうさんの伸三さん、おかあさんの登久子さん(ともに写真家です)、こどものまほさん(若き漫画家)の島尾家の三人が、中国に行って集めてきたものや、それぞれが制作したもの(写真集やまんがやお茶の本やポストカードや)をギャラリーコーナーいっぱいに夜店みたいな感じで並べて(展示して)売っています。奥が中国雑貨コーナー、手前が作品コーナー。伸三さんの出版されたばかりの、そして初めての写真集「まほちゃん」の中の写真も数点、壁に展示されています。それはまほさんが小さかったころの写真です。モノクロです。その写真もそうなのですが、ここの世界(この展示コーナー)には、時代というものがないように感じられます……。時間が無化されているというか、ある空気や場や想いだけが存在しているような。いまどき、不思議な空間です。
すごく昔のものも最近のものも、中国で買ってきたものもつくったものも、いっしょくただからでしょうか(コーナーはわかれていますが)? たとえば伸三さんが若き日につくった手づくり漫画集とか、おじいさんの敏雄さん(作家)の詩集(お葬式のときに配ったそう)などが作品コーナーの棚の奥から出てきたりします。「希少価値ありますよ」と店長さんはいいます。しかし、見上げれば壁には毛沢東、その下の棚には動物の顔ブローチ(動物の毛でできています、と店長さん)が並んでいるのです(わたしはウサギのを買いました)。中国雑貨や中国茶についての超ディープな本も数冊あります(これは作品コーナー)。わたしは「中国茶読本」(島尾伸三著/平凡社/1553円)と「中国のかわいいおもちゃ」(島尾伸三・潮田登久子著/平凡社1524円)を買いました。
この本はすばらしいです。この展示に来るまで、わたしは伸三さんが中国通とはまったく知りませんでした。店長さんのお話では、伸三さんは奄美大島に住んでいたころ、地図をひろげて800km圏内の場所を探していて中国を発見したそうです。さえてますねぇ、この感覚。南の島の人というのは、国境感覚がうすいのでしょうか。小さな島の民なのに(だから)、島国感覚(根性)はない?
「中国茶読本」を35頁まで読んだところですが、もう書評が書けるくらいわたしの中では感動が蓄積されています。まず写真がすばらしいです。お茶やさん(喫茶店)でくつろいだり、食べたりしている中国の人々が写っています。普通の写真ですが、とてもいいです。作品、という顔つきをしていない写真です。お茶の名前にちゃんと発音がカタカナで書いてあって、「広」(広東語)、「北」(北京語)などの注釈がついているのも実用的だし、とても文化的です。そういうところが作家だな、と思います。このように信頼できる人から、お茶の話を聞かせてもらうのが面白くないわけがありませんね。島尾一家のお茶との出会いは、1981年に伸三さん、登久子さんが中国旅行をしたとき、長距離列車の中でのお茶のサービスに二人して感心したのが始まりだそうです。35頁まで読んだところでの圧巻は、「スワトーへ」という題のエッセイです。1983年、まほさんが四歳のとき三人でスワトー刺繍の産地まで15時間のバス旅行をしたときの話が書かれています。詩的で、不思議で、どこか可笑しなそんな文章です。
ところで家へ帰って、ウサギのブローチ(500円)を付けてみました。顔がけっこう大きいのと耳のせいで、タテは5、6cmはありそうです。いちばんはまった場所は、チェックのシャツ(ツモリチサト)のすそ、でした。ヴェリーキッチュ! あと金と赤の小さなバッジ(150円)も買ったので、それは紺のウールコート(アニエス. b)の胸ポケットにつけてみました。小さいのに目立ちます。中華パンク? この2点はそういえば、プロジェットの販売スタッフの女の子と同じ選択だったそうです。ただ彼女はこれにくわえて馬の横顔ブローチも買ったそうです。と、ここまで書いてきて、なにか見落とした「いいもの」がまだあそこにあるような気がして胸がサワサワしてきました。島尾一家がこの展示のために中国で買いつけてきた雑貨の数々、そして作品集の数々は、3月16日(土)夜9時までプロジェットのギャラリーコーナーにあります。
2002年2月26日(火)午後7時
大黒和恵・editor@happano.org
*渋谷・道玄坂、クリエーターズ・ブック・ショップ、Progetto
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